はっきり言って、リーグ・オブ・レジェンドのMSIは、LECファンにとって厳しいものとなりました。G2 EsportとMAD Lionsは完全に立ち後れてしまい、中国と韓国のチームに差を付けられました。Spring SplitチャンピオンのMADがT1に17分間でせん滅させられたのは、特に苦い経験でした。
筆者は今年の前期に、新しいLECフォーマットによってEMEAリーグ・オブ・レジェンドチームの成績が向上するか考察する記事を書きました。今、それに対し、圧倒的に否定的な答えが見えています。
しかし断定するにはまだ早すぎます。とは言え、最初の6か月が経過した今、この変更がLECに与えた影響を省みるのは無益ではありません。
エンターテインメント性は上がっていないのか?
世界の舞台で振るわなかったとはいえ、おそらくほとんどのLECファンは、新しいフォーマットは驚異的に成功していると言うでしょう。
リーグではエキサイティングな対戦が従来よりはるかに早い段階で展開されるようになり、緊張感があって結果が本当に重要な、興味深く魅力的なシリーズが増えています。これまでの試合は非常におもしろく、たとえば春にTeam BDSが大躍進して準優勝に輝くなど、Winter SplitでもSpring Splitでもこの上ない楽しみと驚きが生まれています。
Bo1形式によってスプリットが進むにつれ順位が大きく変わり、それを見るファンはワクワクします。冬には、KOIが7位から3位に上がり、Team Vitalityは首位から転落してベスト4にも残れませんでした。春には、辛くも8位でGroupの予選を突破したMADが、最終的に大会のチャンピオンになりました。
夢のようなストーリーが繰り広げられ、興奮が止まりません。LECからは不要なものが削ぎ取られたように感じます。何も重大なことが起こらず視聴者を飽きさせるような消化試合は、過去のものとなりました。
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複数の関係者が変更について考えを語るこの動画で(この動画についてはこの記事で何度か言及します)、Luka “Perkz” Perkovićは、常に悩んでいるわけにはいかないと認めています。
「今では実際にすべての試合が重要になったと思います。以前も、Bo1での18戦はすべての試合が重要だと言われていました。それは正確ではありませんでした。」
この変更の恩恵を最も受けているのは視聴者です。唯一のマイナス面は、このフォーマットでは作業量が増えたためブロードキャストチームが広範囲に散らばったことです。その結果、今年4回あるLECファイナルのうち3回はLECのベルリンスタジオで小規模の観客の前で行われ、ロードショーは1年に1回しかなくなります。
その壮観を見られないのは残念としか言いようがありませんが、少なくとも初年度は致し方ありません。クルーは追加されたショー日程のやり繰りに毎週頭をひねっているからです。
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成功に向かっているか?
また、プレイヤーにとって、ロードショーが減ると国際的イベントで大観衆を前に戦うための準備ができなくなるとも言えます。しかし、MSIに向けたLECチームの準備が難しいのは、それだけが理由ではありません。
ご存知のように、新しいフォーマットによって、Spring Finalの日程が2023年4月23日まで先送りされました。MSI開始までは1週間余りしかありません。LPLの終了が4月15日と遅い一方、LCSとLCKはどちらもそれより早く4月9日に決着し、参加チームは休養と準備の時間をはるかに多くとることができます。
加えて、これら3つのリーグのファイナルがパッチ13.5で戦われる一方、LECチームはこのファイナルに向けて新しいパッチ(13.6)に慣れる必要がありました。環境を一変させるような大きなパッチではありませんでしたが、それでも努力と分析は余分に必要になりました。一方、その他のMSIチームは、パッチ13.8での練習にすぐに移ることができました。
このフォーマットの競技上のメリットに対する真の疑念の根源は、Championship Pointシステムにあります。春には、冬に2位だったMAD LionsがSpring Finalに残らなくてもMSIの出場権を獲得する可能性があることを多くの視聴者が不満に思い、多くの騒ぎが生まれました。
もちろん、結局MADは春に最後まで勝ち抜いて出場権を獲得しましたが、Winter SplitチャンピオンのG2は、楽々と通過した結果、最終順位は4位にしか届きませんでした。LCSで同じフォーマットが適用されていたら、ガッツのあるGolden GuardiansではなくFlyQuestがMSIに進出していたでしょう。
これは考えものです。安定性は評価されるべきですが、パッチがいかにチームの成功を左右するか考えると、大会の実際の開催より3か月前に出場権が決まるのは、おもしろいものではありません。同時に、Winter Splitを意義ある妥当なものにするには、何らかの冒険が必要です。
確かにバランスは難しい
少なくとも、双方のスプリットで獲得できるポイントを均一にすべきではありません。極点な例を言うと、Winter Splitを大きく変えてもいいのではないでしょうか。LECとEMEA地域リーグ(ERL)のチームを混ぜ合わせたイベントでもいいでしょう。
もっとも、現行のLECのフォーマットはそれでも、総じて地域の競技力向上に著しく貢献しています。
試合数が増えたことで、中位のチームと新進のプレイヤーがレベルアップするチャンスが増え、それによって成長が促されています。
MADのコーチのJames "Mac" MacCormackが指摘しているように、シリーズの増加は、ビッグシリーズでの選手の耐久力を上げるのに大きく寄与します。「Bo3の切り抜け方、Bo5の切り抜け方、Bo5への適応の仕方について、チームの理解度が上がる可能性は高いと思います。」
しかしPerkzが言うように、LECチームが世界的に成功するためには、新たなBo1ステージもきわめて重要になるでしょう。「今では、Bo1の全試合がとても重要になりました。基本的に、Worldsに向けた訓練になっています。」世界大会のステージで戦う時と同様、チームは、絶対に負けられない一発勝負の対応法を知る必要があります。
しかし、KOIのMarkos "Comp" Stamkopoulosは、国際舞台でのチームのパフォーマンスに影響する要因はフォーマットだけではないと示唆しています。「必ずしもフォーマットによってそれ(EMEAチームの成績)が変わるとは思いません。少なくとも自分の経験上、東洋のチームと対戦してそのスクリムのやり方に直面すると、ほとんどの場合、ヨーロッパのスクリムとはまったく違っています。東洋のチームと対戦するときに自分たちのスクリムを強化すれば、良い結果が出せるのではないかと思います。」
加えてMacは、スケジュールと負担が増えることを、当然ながら懸念しています。「普通、Worldsで1年を戦い終えたときは、とにかく疲れ切っています。だから、今年の終わりにはヨーロッパの多くのプレイヤーがとてもとても疲れ切ってしまうのではないかと少し心配しています。このフォーマットで大きく警戒すべきなのはその問題です。それ以外は本当にメリットばかりだと私は思います。」
一部のファンがいち早く指摘しているように、それが競技の性質です。どの地域のチームも常にそれと闘っています。最終的にトップを目指すなら努力する必要があります。
全般的に、この地域にとって新フォーマットがためになる部分は数多くあります。最終的には視聴者をさらに楽しませる結果となって、チームは貴重な実地経験を積むでしょう。
しかし、このフォーマットは決して完璧ではありません。国際舞台でのEMEAチームの競技力向上につながるのであれば、おそらくしばらく時間はかかっても、その進歩が真価を表す時が来るでしょう。