現在eスポーツ産業の成長が著しい地域として、中国が挙げられます。選手、スポンサーシップ、観客に関して北米やヨーロッパなどの地域に何度もチャレンジして打ち破っているので、国内で何が人気なのか知ることは重要です。
中国におけるeスポーツの略歴
多くの国と同様に、中国のeスポーツの歴史は、インターネットへのアクセスが広く普及するようになった1990年代中頃からたどることができます。韓国のPCバンと同じようなPCゲームカフェの成長を受けて、eスポーツは1996年以降、Command & ConquerやQuake IIなどのゲームにより足がかりを築きました。
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韓国と同様に、国内でeスポーツの大会が開催されるきっかけとなったのは1998年のStarCraft 2のリリースでした。実は韓国と中国は、2000年代初期から中期におけるeスポーツの成長の軌跡が非常に似ており、2003年にeスポーツをスポーツの1つの分野として受け入れられました。2019年には、中国政府が「プロゲーマー」を仕事の肩書として公認しました。
世界の多くの地域と同様に、この国におけるeスポーツ成長の真のきっかけは2009年にLeague of Legendsが登場したことです。このゲームの中国でのトップディビジョンであるLeague of Legends Pro League(LPL)は、ゲームの開発者によると、現在国内でバスケットボール、サッカーに次いで3番目に人気のあるプロスポーツです。
LPLのチーム、満員のスタジアム、相当な規模のプレイヤー基盤を考えると、おそらくLoLが中国で最も人気のあるゲームです
また中国はLeague of Legends(LoL)の主要な地域として初めてフランチャイズ制を導入し、2017年の春のシーズン後に、リーグは12のチームと正式に契約を結びました。それ以来LPLは年に一度着実にチーム数を増やし、現在17チームを保有しています。この制度変更後の2018年と2019年に、中国チームは2年連続でLoL World Championshipのタイトルを獲得しました。
中国はeスポーツ分野において、ビジネス面でも大きな影響を与えています。LoLの開発元のRiot Gamesは、深圳市を拠点とするメディア関連複合企業であるTencentが完全に所有しています。StarCraft 2とOverwatchの開発元のActivision Blizzardは、一部がTencentの所有で、NetEaseを利用して中国でゲームを公開しています。eコマース企業のAlibabaはオリンピック形式のWESGトーナメントを所有・運営し、eスポーツで最大規模の賞金総額を提供しています。
eスポーツが中国で人気となっている理由
eスポーツが中国で一定の成功を収めたことには多くの理由があります。主な要因は、PCゲーム自体の人気の高さです。2000年から2015年まで、国内では家庭用ゲーム機が禁止されていました。西半球や日本ではこのようなデバイスがゲーム市場の大部分を占めていましたが、中国の市場では潜在的なゲーマーにPC、モバイル、Webのプラットフォームが代わって用意されていました。
中国のeスポーツの成長の一つの要因としては、単にビデオゲームをプレイする人が多いことも挙げられます。推定では、中国のオンライン人口の70%にあたる5億6,000万人がビデオゲームをプレイします。LoLなどのゲームが国内で最も人気があることを考えると、そのプレイヤー基盤を観客に変えることは難しいことではありません。
2016年、中国政府は業界における自国の国際競争力を認めて、eスポーツを支援する新たな対策を打ち出しました。このお墨付きにより、中国を拠点とするeスポーツチームに多くの投資が集まり、LPLのフランチャイズ制導入につながって、幅広い支援コンテンツが許可されました。
中国で人気のeスポーツ
中国において2大人気のeスポーツのジャンルはMultiplayer Online Battle Arena(MOBA)です。LoLはおそらく中国で最も人気のあるeスポーツです。LPLがあり、相当な規模のプレイヤー基盤があり、トップレベルのリーグではスタジアムが常に満員となります。
この2年のLoL World Championshipでは中国のチームが優勝しました。2018年に韓国のタイトル防衛を阻止したInvictus Gamingと、昨シーズン優勝のFunPlus Phoenixです。2020 World Championshipは中国で開催されることになっており、そのグランドファイナルは国内最大の都市にある上海スタジアムで行われます。
Dota 2も国内で非常に人気のあるゲームです。Dota 2の最大の大会であるThe Internationalで、中国チームは単一の国としては最多の3回優勝したことがあります。上海のメルセデスベンツアリーナで開催された第9回大会は、初めて西半球以外で開催された大会であり、18,000人収容のスタジアムが満員になりました。
LoLとDota 2以外のゲームはますます数が増えてきています。Hearthstoneなどのコレクタブルカードゲームや、Riot GamesのTeam Fight Tacticsなどのオートバトルゲームは、注目のゲームとして名前が挙がっています。StarCraft 2などのRTSタイトルも、以前よりシェアが縮小しているにもかかわらず国内のeスポーツシーンで確固たる地位を築いています。
FPSタイトルについてはさまざまなケースがあります。Overwatchの場合、Overwatch Leagueのパシフィックイーストディビジョンの5チーム中4チームが中国以外を拠点としています。中国は、リーグの200人のプレイヤーの内15人を輩出し、韓国、アメリカに次いで3番目に貢献度が高い国です。
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CS:GOなどの伝統的なFPSタイトルは中国ではそれほど人気ではありません。CS:GOの場合、中国で公式にリリースされたのは、ValveがPerfect Worldと提携して中国版のSteamクライアントを発表した2017年でした。それまでは基本的にCrossfireが市場を独占していました。Crossfireは韓国で開発され、2007年のリリース以降アジアの多くの地域でプレイされたタイトルで、そのシリーズはCounterStrikeのオリジナルタイトルと極めて似ています。
モバイルでのeスポーツも、国内で人気のニッチな市場です。Honor of KingsやKings of Gloryとしても知られるArena of ValorやClash Royale、さらにはPUBGのモバイル版などのタイトルが、2018年以降大きな成長を見せています。そのすべてのゲームのeスポーツシーンはトップレベルです。例えば、Arena of Valorには中国のKing Pro League(KPL)があります。KPLには伝統的なスポーツやOverwatch Leagueを思わせる形式があり、各チームの試合会場でホームとアウェーの対戦を行うのが特徴です。